水産研究成果情報検索結果




 ベーリング海におけるサケの分布と起源
ベーリング海で8-9月にトロール網により漁獲されたサケの起源を遺伝的系群識別法により推定した.漁獲されたサケの97%は未成魚で,そのバイオマスに占める割合は日本系47%,ロシア系34%,北米系19%と推定された.北米系サケの分布は東部海域に偏っていたが,アジア系サケは調査海域に広く分布し,資源量の卓越することがわかった.
担当者名 独立行政法人さけ・ます資源管理センター(本所) 調査研究課 遺伝資源研究室 連絡先 Tel.011-822-2341
推進会議名 北海道ブロック 専門 資源生態 研究対象 さけ・ます類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 8(1)高度回遊性及び外洋性資源の生物特性の解明と持続的利用技術の開発
[背景・ねらい]
日本系サケ(=シロザケ)は海洋を広く回遊し,主にベーリング海で摂餌して成長すると推定される.海洋の環境収容力や気候変動がさけ・ます類の生産に与える影響が懸念されることから,2002年よりベーリング海と周辺海域で,さけ・ます国際共同調査(BASIS)が開始された.本研究では,ベーリング海に生息するサケの系群毎の分布特性と資源量を明らかにするため,トロール網を用いた分布調査で漁獲されたサケの起源を,遺伝的系群識別法と耳石標識で調べた.
[成果の内容・特徴]
 2002年8月21日から9月18日にかけて,ベーリング海の38定点(51-59N, 172E-162W)で水産庁調査船「開洋丸」による表層トロール曳網(1時間)を行った.サケは,北緯51度以北の広い海域で漁獲され(図1),97%が未成魚であった.

 電気泳動法でタンパク酵素20遺伝子座における遺伝子型を決定し,環太平洋サケ基準群(128集団)を用いて最尤法により海域別にサケの系群組成を推定した.その結果,全調査海域でアジア系(ロシアと日本起源)サケが卓越していた(図2).推定された系群組成に基づき,系群毎のCPUE(トロール曳網1時間当たりの漁獲個体数)を比較した(図3).アジア系サケは調査海域に広く分布するが,その豊度は東部海域で高い傾向を示した.北米系群の分布は東部海域に偏っていた.調査海域において,サケ未成魚のバイオマスに占める割合は,日本系47%,ロシア系34%,北米系19%と推定された.

 耳石標識を調べたところ,日本産サケ3個体とロシア産サケ2個体がベーリング海の180度以東海域でみつかり(図4),遺伝的系群識別による推定結果を裏付けた


[成果の活用面・留意点]
(1)平成15年3月に閣議決定された「新生物多様性国家戦略」では,北太平洋生態系との調和に配慮したさけ・ます類の持続的資源管理を求めている.

(2)夏から秋にかけてベーリング海は日本系サケの重要な摂餌場となっており,同海域において系群識別,種内および種間競合を含めた資源・生態・海洋モニタリング調査は必須である.

(3)遺伝的系群識別と耳石標識は,サケの資源モニタリング調査に有効である.


[その他]
研究課題名:ベーリング海及び周辺海域のシロザケの遺伝的系群識別に関するNPAFC協同研究

研究期間:平成15年7月〜平成18年6月

予算区分:国外からの委託研究(North Pacific Research Boardファンド)

研究担当者:浦和茂彦(さけ・ます資源管理センター)・東屋知範(北海道区水産研究所)

発表論文等:Urawa, S., T. Azumaya, P. A. Crane, and L. W. Seeb. 2004. Origin and distribution of chum salmon in the central Bering Sea. NPAFC Tech. Rep. 6 (In press.)



[具体的データ]

図1. 2002年8-9月べーリング海におけるサケのCPUE分布.CPUE=トロール曳網1時間当たりの漁獲個体数.



図2. 遺伝的系群識別により推定されたサケの系群組成.



図3. 遺伝的系群識別により推定されたサケの系群別CPUE分布.CPUE=トロール曳網1時間当たりの漁獲個体数.



図4. ベーリング海で再捕された日本およびロシア起源の耳石標識サケ.






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