水産研究成果情報検索結果




声で海洋生物の地図をつくる
水中生物音を用いた生物地図の作成を試みた。共同研究チームの音響計測ネットワークと解析技術により、種別の音声の同定・抽出・可視化を行い、限られた範囲であるが資源分布の動画地図を得た。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構中央水産研究所 海洋・生態系研究センター 生態系モデルグループ 連絡先 Tel.045-788-7698
推進会議名 中央ブロック 専門 計測・調査法 研究対象 海産哺乳類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 5(1)生態系の機能・構造解明及び地球温暖化対策のための研究開発
[背景・ねらい]
 光や電波が届かない海中では、音波が遠隔観測に広く用いられている。あまり知られていないが、鯨類だけでなく魚類や甲殻類など多くの海洋生物も、音波による威嚇やコミュニケーションを行っている。もしそれらの生物の音声を種ごとに判別し定位できれば、水中に録音機を沈めることで生物分布を観測できると期待される。3機関4グループが共同して5年間実施したCRESTプロジェクトでは、このための技術を開発し、最終年度の成果として複数種の生物地図を作成することを目的とした。
[成果の内容・特徴]
海洋研究開発機構と共同して海底ケーブルや定点型の水中マイクロホンを用い、国内外で延べ30万時間の水中録音を実施した。計52種の海洋生物鳴音を同定し、東北学院大学と共同して解析アルゴリズムを開発し、音声の分離・判別を行いました。また音響的検出確率から現存密度を推定する数理的モデルを開発した。

その結果、地震観測用海底ケーブルで集められた水中音からは、釧路沖に冬に来遊するナガスクジラの音声が明瞭に記録されていた(図1)。目視調査が困難な冬季の大型鯨類の生態を、音で可視化することができた。茨城県から千葉県の太平洋側に20あまりの観測定点を設け、これに記録された音声からスナメリ、シログチ、テッポウエビの分布地図をつくった(図2)。
[成果の活用面・留意点]
音響観測の利点は、この地図が日に日に変わる様子をアニメーションとして示すことができる点である。水産資源においてこのような動画の分布地図を実測で得る技術はこれまでなかった。資源管理や環境影響評価などに応用可能と考えられる。衛星から見た雲の動きのように海洋生物を可視化するための、一つの足掛かりを得ることができた。
[その他]
研究課題名:戦略的創造研究推進事業 CREST 海洋生物の遠隔的種判別技術の開発

研究期間:平成23〜28年

予算区分:受託事業

研究担当者:赤松 友成・澤田 浩一・安部 幸樹・今泉 智人・柴田 玲奈・高山 剛・南部 亮元・松裏 知彦

発表論文等:5. Ito, M., Matsuo, I., Imaizumi, T., Akamatsu, T. (2017) Estimation of direction of arrival of fish calls in a chorus using stereo hydrophones, Marine Technology Society Journal, 51(4), 68-75. 14. Lin, T., Akamatsu, T., Chou, L. (2015) Seasonal distribution of Indo-Pacific humpback dolphins at an estuarine habitat: influences of upstream rainfall, Estuaries and Coasts, 38, 1376-1384. ほか
[具体的データ]

図1 地震観測用海底ケーブルの音響データから得られたナガスクジラの鳴音位置

冬の繁殖期にみられるナガスクジラの典型的な鳴音が多数記録されていた。複数の水中マイクロホンにより、音源位置の計測も行った。

図2 音声を元に作成したシログチの分布

房総半島沖に多数の音響定点を設置し、記録された音声を種ごとに判別した。密度推定モデルを適用し、単位面積当たりの生息数を示した。




[2017年の研究成果情報一覧] [研究情報ページに戻る]