水産研究成果情報検索結果




岩手県宮古湾におけるニシンの産卵場・成育場としてのアマモ場の利用形態
 岩手県宮古湾において、ニシンの産卵場や成育場としてのアマモ場の利用形態を調べた。湾奥域にあるアマモ場は東日本大震災による津波によって面積が震災前の1/7まで減少したが、震災6年後には震災前とほぼ同じ面積まで回復した。宮古湾に来遊したニシンは、湾奥西岸の植生密度が高いアマモ場を産卵場として利用するが、仔稚魚は東岸の植生密度が低いアマモ場や砂泥域を利用していることがわかった。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構東北区水産研究所 沿岸漁業資源研究センター 浅海生態系グループ 連絡先 Tel.0193-63-8121
推進会議名 東北ブロック 専門 資源生態 研究対象 魚類 分類 普及
「研究戦略」別表該当項目 1(3)水産生物の生育環境の管理・保全技術の開発
[背景・ねらい]
 ニシンは沿岸域のアマモやホンダワラ等の海草・海藻類に産卵することから、本種資源の持続的利用のためには、再生産などに利用する沿岸域の環境保全(場の管理)が重要である。岩手県宮古湾に来遊するニシンも湾奥域にあるアマモ場(図1)で産卵すると考えられてきたが、そのアマモ場は東日本大震災による津波によって大きな被害を受けた。本研究では、震災直後から宮古湾奥のアマモ場の調査を行い、被害状況や回復過程を把握するとともに、ニシンの生態調査を実施し、本種がアマモ場を中心に湾奥域を産卵場や成育場としてどのように利用しているかを調べた。
[成果の内容・特徴]
 宮古湾奥のアマモ場の面積は、震災前は50〜60 haであったが、震災後の2011年9月には8.4 haに減少していた(図2)。その後、面積は徐々に拡大し、2017年8月には49.4 haと震災前とほぼ同じ面積まで回復した。東岸と西岸のアマモ場の葉長と植生密度を比較したところ、平均葉長では大きな差はなかったが、植生密度では西岸(11.2〜139.8株/m2)は東岸(2.2〜33.8株/m2)よりも高かった(図3)。産卵場調査では、2013、2016年に湾奥西岸のアマモ場でニシン卵が確認され、同藻場を産卵場として利用していることがわかった。2012〜2015年の仔稚魚調査では、5〜7月に湾奥中央部に位置する河口域から東岸において仔魚(全長8.1〜34.3 mm)と稚魚(35.1〜124.4 mm)が採集された(図4)。これらの結果から、ニシンは湾奥西岸の植生密度が高いアマモ場を産卵場として利用するが、ふ化後は東岸へ移動し、植生密度の低いアマモ場や河口域などの砂泥域を仔稚魚期の成育場としていることがわかった。
[成果の活用面・留意点]
 宮古湾におけるニシンの産卵場や生活史初期の成育場は、沿岸のごく一部に限られており、同様の利用形態が、北海道厚岸水域や青森県尾駮沼を利用するニシンでも観察されている。本研究の成果は、本種資源の場の管理に関する指針を提供するものであり、アマモの植生密度が高い場所だけでなく、植生密度が低いアマモ場や砂泥域の保全にも取り組む必要があることを示唆している。
[その他]
研究課題名:沿岸海域複合生態系の変動機構に基づく生物資源生産力の再生・保全と持続的利用に関する研究

研究期間:平成23〜28年度

予算区分:文部科学省国家基幹研究開発推進事業

研究担当者:白藤徳夫,清水大輔,松本有記雄(東北水研),山根広大(岩手県水技センター),村瀬偉紀(長崎大学),渡邊良朗(東京大学)

発表論文等:Fisheries Science 投稿中
[具体的データ]




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