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安定同位体比分析によるサンマ回遊群の識別
 サンマ1歳魚の窒素安定同位体比は日付変更線付近を境に東西で大きく値が異なり、西側は5.6〜9.0‰であったのに対し、東側では7.0〜14.0‰と高い値であった。餌生物の値(5‰)からは西経域に出現した高い窒素安定同位体比をもつサンマの由来を説明できず、これらのサンマは、別の場所から移入した個体と考えられた。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構東北区水産研究所八戸庁舎 資源管理部 浮魚・いか資源グループ 連絡先 Tel.0178-33-3411
推進会議名 東北ブロック 専門 資源生態 研究対象 さんま 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発
[背景・ねらい]
 サンマは少なくとも1歳魚が日付変更線付近から日本沿岸漁場まで東西回遊を行うことが、耳石年輪半径を指標とした研究で明らかになりつつある(Suyama et al. 2012)。しかし、日付変更線以東を含めた回遊の知見はなく、北米沿岸も含めたサンマ分布域全体にわたる回遊様式は不明である。生物の窒素安定同位体比は餌生物の値を反映するため、同じ種であっても海域が異なれば、餌生物の同位体比の違いを反映してその値も異なることがある。サンマでは、北米沿岸で採集された個体の窒素安定同位体比が、日本沿岸で採集されたものよりも顕著に高い値を示すことが知られている(Davies et al. 2009; Brodeur et al., 2008)。そこで本研究では、日付変更線を挟んだ海域で採集したサンマについて、海域ごとの窒素安定同位対比の特徴を調べ、北太平洋東部海域からの回遊の可能性について検討した。
[成果の内容・特徴]
 2013年から2015年の6-7月に図1に示す調査点において表層トロールを昼間に60分曳網することで採集したサンマを標本に用いた。各定点の20個体について、胸鰭上部の背側から筋肉部を採取し、窒素安定同位体比分析に供した。2015年にはさらに西経域の2点で各20個体から消化管内容物を摘出し、安定同位体比の分析を行った。サンマ1歳魚の窒素安定同位体比は日付変更線付近を境に東西で大きく値が異なり、西側は5.6〜9.0‰と低い値であったのに対し、東側では7.0〜14.0‰と高い値を示す個体が多数出現した(図2)。消化管内容物の窒素安定同位体比は平均で5.0‰であった。一般的な窒素の濃縮係数(3.4‰)を当てはめれば、西経域のサンマは8.4‰前後の値をとると推定される。従って、餌生物の値からは西経域に出現した高い窒素安定同位体比(9〜14‰)をもつサンマの由来を説明できず、これらのサンマは、別の場所から移入した個体と考えられた。過去の研究では、北米沿岸域で採捕されたサンマも本研究の西経域で採集した個体と同様に高い値(13〜14‰)を示すことが報告されており、北米沿岸由来のサンマ1歳魚が北太平洋中央部まで回遊している可能性が考えられた。
[成果の活用面・留意点]
 本研究により窒素安定同位体比が回遊群の指標となることが分かった。今後、季節別・海域別のデータを蓄積することでサンマ回遊動態を解明し、漁場来遊予測モデル構築に貢献することにより、漁況予測の精度向上に寄与することが期待される。
[その他]
研究課題名:国際漁業資源評価調査委託事業

研究期間:平成29年度

予算区分:水産庁委託事業(国際漁業資源評価調査委託事業)

研究担当者:冨士泰期・巣山哲・宮本洋臣・木所英昭(水産機構東北水研)・中神正康(水産機構本部)

発表論文等:なし
[具体的データ]




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