水産研究成果情報検索結果




黒潮蛇行とシラス大不漁との関係解明および漁況予測への可能性
 2015年8−9月のしらす漁が、これまでの最低水準だった2004年を更に下回る過去最低となった。プランクトン量及びカタクチイワシ卵量から不漁要因を検証した結果、黒潮が大きく蛇行したことが大きな要因と考えられた。また、今後黒潮が同様の流型をとった場合、浮魚礁の観測データにより事前にシラス漁業者に対し、極端な不漁になる可能性が高くなる旨情報提供することが可能となった。
担当者名 神奈川県水産技術センター 企画資源部  連絡先 Tel.046-882-2313
推進会議名 中央ブロック 専門 資源評価 研究対象 いわし 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発
[背景・ねらい]
 相模湾のしらす加工品は神奈川ブランドにも登録され、近年「湘南しらす」としての認知度も高まってきていることから、シラスを安定的に供給することが漁業経営上重要である。しかし、遊泳能力の乏しいシラスの来遊は資源量のみならず、海況変動等の外的要因の影響を受けやすい。したがって、シラスの好不漁要因について知見を蓄積することは、今後の漁況予測の精度向上及びしらす漁業者の操業計画に寄与するものである。
[成果の内容・特徴]
 標本船3ヶ統の操業日誌に因れば、2015年8月17日から9月下旬にかけて全くシラスの反応がなくなり、相模湾内全域で稀に見る不漁となった(図1)。また、当センタ−が毎月行っているプランクトン調査及び卵稚仔調査の結果からは、過去5年のと5−8月と比べ極端な餌料環境及び産卵量の悪化傾向は見られなかったことから、生物的要素が主たる不漁要因ではないと考えられた。

 一方、相模湾中央部にある浮沈式魚礁のデータ及び漁業調査指導船の海洋観測結果から、漁礁が8月に断続的に50−100m水没していたと思われ(図2)、急潮情報も8月に12回、9月に19回と多く発令された。これは、相模湾内に非常に強い沖合系水の流入が断続的に発生したことを示すもので、黒潮が大蛇行(A型)で推移した2004年も同様だった。両年の黒潮流路の共通事象として、1)黒潮が北緯32度以南まで大きく蛇行した後、2)三宅島周辺〜房総半島南岸近くまで北上、3)更に北東方向へ流去したことが挙げられる(図3)。

 このことから、黒潮の反流として相模湾内へ非常に強い沖合系水の流入が継続したことが、遊泳能力の乏しいシラスの漁場形成を妨げ、稀に見る不漁に繋がったと考えられた。
[成果の活用面・留意点]
 今回のように黒潮が八丈島を迂回するC型基調で推移することはよくあることで、好漁のケースも度々あり、C型基調=シラス不漁という関係ではない。また、今回は蛇行規模が大きく、かつ蛇行後の北上流路が相模湾のすぐ南沖まで来たことが、結果として大蛇行型と同じ負の影響を及ぼしたと考えられた。本件の成果により、今後黒潮が同様の流型をとった場合、浮魚礁の観測データにより事前にシラス漁業者に対し、極端な不漁になる可能性が高くなる旨情報提供することが可能となった。

 今回の研究では、度重なる沖合系水の相模湾への強い流入をシラスの不漁要因として挙げたが、相模湾内での沖合系水の流入に関し、その水塊構造については詳細な研究が行われていないことから、この分野での研究成果が待たれる。
[その他]
研究課題名:本県沿岸域におけるシラスの漁況予測手法の再検討

研究期間:平成23〜27年度

研究担当者:舩木 修
[具体的データ]

図1 標本船A丸のシラス日別漁獲量(2015年7月〜9月)


図2−1 浮魚礁の水温変化(2015年8月1日〜31日)


図2−2 浮魚礁付近での県漁業調査指導船による水温変化(2015年8月20日)


図3 2015年8月16日の黒潮流型(海上保安庁海洋速報)





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