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低温飼育による空ウニの品質改善
磯焼け地帯に数多く生息する身入り(可食部である生殖巣の発達程度)の悪いキタムラサキウニを夏から秋にかけて低水温下で給餌飼育することにより、成熟による品質低下を回避しながら身入りを改善することができ、天然個体の品薄期(10月)に高品質な生殖巣を得られる。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所釧路庁舎 生産環境部 資源増殖グループ 連絡先 Tel.0154-91-9136
推進会議名 北海道ブロック 専門 増養殖技術 研究対象 うに 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
北海道の日本海側に広がる磯焼け地帯には多数のキタムラサキウニが生息するが、餌不足のために身入りが悪く、空ウニと呼ばれて漁獲利用されていない。しかし、短期間の養殖で身入りを改善できれば商品化も可能である。ウニの生殖巣は栄養貯蔵器官を兼ねており、栄養を蓄積して肥大した成熟前の生殖巣が食品として好まれ、成熟すると生殖巣から卵や精子が流出する「身溶け」や味の低下により、商品価値が損われる。そのため、養殖にあたっては成熟を抑制しながら身入りを改善することが望まれる。
[成果の内容・特徴]
低水温下での飼育がキタムラサキウニの身入りと成熟に及ぼす影響を調べるため、磯焼け地帯で採集したウニ(平均体重26g)を6月30日から10月12日まで生息地の水温(対照区;18〜22.5℃)、15℃一定または10℃一定で、飽食量のナガコンブを与えて飼育した。期間中の個体当たり総摂餌量は対照区で239g、15℃区で248g、10℃区で187gであった。飼育開始時の生殖巣指数(体重に対する生殖巣重量の割合)は7.4%だったが、対照区と15℃区では5週間後、10℃区では10週間後に商品化の目安である15%を超えた(図1)。生殖巣の組織標本を観察したところ、温度が低い試験区ほど卵や精子ができるのが遅く、飼育終了時における商品価値のない成熟個体の割合は10℃区では0%、15℃区では5.6%、対照区では38.9%であった(図2)。飼育終了時の身溶け指数(卵や精子の流出のために生殖巣重量が減少する割合)は10℃区では8.1%、15℃区では11.5%、対照区では30.1%であり(図3)、評点法による官能評価でも、外観、味ともに10℃区、15℃区が対照区に優っていた(図4)。以上の結果から、空ウニを夏から秋にかけて低水温下で十分な餌を与えて飼育することにより、成熟による品質低下を回避しながら身入りを改善できることがわかった。
[成果の活用面・留意点]
磯焼け地帯の空ウニを集め、夏から秋にかけて低水温に保った水槽で養殖すれば、天然個体が成熟して商品価値を失い、資源保護のため禁漁にもなっている10月の品薄期に高価格で販売できると考えられる。海洋深層水や地下海水などを利用すれば、高水温期に飼育水温を下げることが可能である。磯焼け地帯で生海藻やそれに代わる餌をどのように確保するかが今後の課題である。
[その他]
研究課題名:新たなウニ養殖システム開発のための予備的研究(交付金シーズ研究),給餌型ウニ低温蓄養システムの開発(北海道立総合研究機構重点研究)

研究期間:平成26年度(平成22,24〜26年度)

研究担当者:鵜沼辰哉(水研セ北水研),村田裕子(水研セ中央水研),長谷川夏樹(水研セ増養殖研),澤口小有美(水研セ西水研),高橋和寛(道栽水試)
[具体的データ]

図1. 飼育期間中の身入りの進行

5週間間隔で体重に対する生殖巣重量の割合(生殖巣指数)を測定。16個体または18個体(10/12のみ)の平均値±標準偏差。


図2. 飼育終了時(10/12)における成熟個体の割合

生殖巣の組織標本を観察し,各試験区18個体のうち卵や精子が十分にできた個体の割合を算出。


図3. 飼育終了時(10/12)における身溶けの程度

生殖巣を摘出して24時間の間に,卵や精子の流出のために重量が減少する割合(身溶け指数)を測定。18個体の平均値±標準偏差。


図4. 飼育終了時(10/12)における官能評価

男女3名ずつの評価者が5段階の嗜好尺度(とても嫌い=1,とても好き=5)を用いて採点。10個体の平均値±標準偏差。





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