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サケの回帰率変動に対する放流サイズと沿岸海洋環境の影響
 我が国のサケの1976〜98年級群の回帰率変動には、稚魚の放流サイズや降海時の沿岸海洋環境が影響することを明らかにした。回帰率変動に影響する要因は地域によって異なり、このことがサケの回帰数の地域差の一因となっている可能性がある。得られた統計モデルでは、いずれも1995〜96年級群の再現値が大きく外れており、これらの年級群の回帰率低下には、沖合域での減耗が関与したことが示唆された。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センターさけますセンター さけます研究部 資源研究室 連絡先 Tel.011-822-2355
推進会議名 北海道ブロック 専門 資源生態 研究対象 さけ・ます類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発
[背景・ねらい]
 1980年代はじめ以降、サケの稚魚放流数はほぼ一定であるにもかかわらず、毎年の親魚回帰数は大きく変動するとともに、地域間格差も依然として大きい。本研究では、北日本を7地域に分けて、1976〜98年級群の回帰率変動の類似性を検討し、類似した地域グループにおいて放流サイズと降海時の沿岸海洋環境を変数化した統計モデルを作成し、回帰率変動の要因の特定を試みた。
[成果の内容・特徴]
 サケの回帰率変動は、オホーツクと根室、えりも以西と本州太平洋の組合せで、類似した傾向を示した(図1)。これらの地域から放流された稚魚が沿岸滞泳期を過ごす海域について、(1)放流前年の11月から放流年の7月までの平均表面海水温、(2)沿岸滞泳期から離岸期(3〜7月)に形成された表面海水温が5〜13℃の海域の面積(km2)を計測し、沿岸海洋環境の指標となる2種類の変数を作成し、さらに、それぞれの地域グループごとに稚魚の平均放流サイズを算出した。

 稚魚の平均放流サイズと沿岸海洋環境に関する2種類の変数を用いて、回帰率変動を再現する統計モデルを作成したところ、オホーツクと根室については平均放流サイズが、えりも以西と本州太平洋については6〜7月の表面海水温5〜13℃面積がそれぞれ回帰率変動に影響することがわかった(図2)。これらの結果、サケの回帰率変動に影響する要因は、地域により異なる可能性が示唆された。

 得られた統計モデルの残差(実測値と計算値の差)は、地域グループ間で有意な正の相関を示し(r=0.44, p<0.05)、1995〜96年級群の残差がともに大きかった(図3)。これらの年級群が2年魚としてベーリング海に生息していた1997〜98年は、当該海域ではエルニーニョの発生に伴う様々な異変が報告されている。そのため、これらの年級群の回帰率は、沖合域での減耗により低下した可能性がある。


[成果の活用面・留意点]
・放流時の種苗サイズや沿岸海洋環境等の情報を活用し、サケ来遊量の早期予測が期待される。

・複数地域について独立した回帰率変動モデルを構築することにより、沖合域における減耗を評価できる可能性がある。


[その他]
研究課題名:さけ・ます類の資源変動モデルの開発

研究期間:平成18年〜平成22年

予算区分:経常研究

研究担当者:斎藤寿彦

発表論文等:Saito, T., and Nagasawa, K.(2008). Regional synchrony in return rates of chum salmon (Oncorhynchus keta) in Japan in relation to coastal temperature and size at release. Fish. Res. (in press).
[具体的データ]




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