水産研究成果情報検索結果




根室湾における放流サケ稚魚に対する海洋環境の影響とその変動要因
2007年根室湾において放流サケ稚魚の分布と海洋環境との関係を調査した。サケ稚魚分布と水温との関係から、その適水温帯は5月下旬〜6月上旬に観察され、同期間中にサケ稚魚は沿岸に滞泳することが明らかとなった。数値海洋モデルにより、本海域における主な流れは風によって生じており、流れ場(風)が水温とともに放流サケ稚魚の分布に影響を及ぼす一因となっていることが示唆された。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所 亜寒帯海洋環境部 海洋動態研究室 連絡先 Tel.0154-92-1722
推進会議名 北海道ブロック 専門 海洋構造 研究対象 さけ・ます類 分類 調査
「研究戦略」別表該当項目 1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発
[背景・ねらい]
根室湾は、西別川や当幌川などで放流されたサケ(Oncorhynchus keta)稚魚が、生活史上最初に暮らす「海洋」である。その水温・塩分分布は定常ではなく、湾へ流入する河川水や外洋水により季節変動を示す。本研究ではサケ稚魚放流期間中の本海域における水温・塩分環境の実態を調べ、サケ稚魚放流期間の海洋物理的環境がサケの初期生活史にとって適・不適を判定するための基礎的知見を得る。また、新たに数値海洋モデルの導入によって同海域の環境変動要因を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
根室湾において2007年4月下旬〜7月下旬までの計10旬に海洋観測(定点を図1に示す)とサケ稚魚の採集が行われた。また、本調査期間中、水温・塩分の連続時系列変化を把握するため、データロガーが西別川河口1.4km沖に設置された。

・本調査海域では、表面水温は沿岸から沖合に向い低下しており、サケ稚魚が分布する沿岸近くでは5月下旬〜6月上旬までサケ稚魚の適水温帯(8-13℃)であった(図2)。

・表面塩分は沿岸から沖合に向い塩分濃度は高くなるが、その分布は旬毎に変化し、一定のパターンは見出されなかった。

・サケ稚魚の分布域は、表面塩分の低い海域(<31.00)と必ずしも一致していなく、サケ稚魚分布と塩分分布との相関性は低いことが認められた。

・海面熱フラックス・風・河川流入で駆動される数値海洋モデルは、データロガーの水温・塩分値の時間変化を再現していることが分かった(図3)。また、流れ場(風)は水温と同様にはサケ稚魚の時空間分布に影響を及ぼしているかもしれないことが示唆された。
[成果の活用面・留意点]
(1) 根室湾における2007年のサケ稚魚降下時の水温環境のモニタリング結果から、当該年におけるサケ稚魚の放流時期は適切であったことが検証できた。

(2)今後、数値海洋モデルとサケ稚魚を模した粒子追跡実験を行い、サケ稚魚(粒子)の経験水温を調べることで、適正放流時期の精度向上が期待できる。
[その他]
研究課題名:根室南部沿岸環境調査

研究期間:平成19年〜平成22年

予算区分:(社)根室管内さけ・ます増殖事業協会委託費

研究担当者:東屋 知範

発表論文等:
[具体的データ]

図1. 根室湾における観測点(●)と解析に用いたデータロガー設置位置(+)


図2. ○印大きさはサケ稚魚の相対採集量(CPUE)と1m深水温分布との比較。クリーム色はサケ稚魚の適水温8-13℃、ピンク色は水温13℃以上の領域


図3. 西別川河口沖における水温(上段)・塩分値(下段)、横軸は時間、太線はデータロガーの観測値(4〜7月)、細線は数値モデルによる再現値(3〜7月)





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