水産研究成果情報検索結果




東北海域におけるキチジの栄養状態の時空間的な変異
近年、東北地方太平洋岸沖(東北海域)のキチジでは、資源量が増加し、それに伴い成長率の低下や小型個体の分布域の変化(水深550mから650mへ)が観察されている。栄養状態を調べた結果、深い海域では個体の栄養状態が悪く、小型個体は競争的に劣位であることが示された。深い海域は、キチジにとって質的に劣る生息場所であると推測された。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター東北区水産研究所 八戸支所 資源評価研究室 連絡先 Tel.0178-33-1500
推進会議名 東北ブロック 専門 資源生態 研究対象 底魚 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発
[背景・ねらい]
東北海域のキチジでは、1999〜2002年級群の加入尾数が多く、その後の資源量は増加傾向を示した。しかし、資源量の増加に伴い、成長率の低下がみられ(図1)、水深550mにおける大型個体の増加に伴い、小型個体の分布が水深650mへと変化した(図2)。一般的に、資源の増加に伴い、最適な生息場所での密度が増加して種内競争が起こること、生息場所が周辺にまで拡大し、劣位な個体が質的に劣る生息場所に追いやられる可能性が指摘されている。本研究では、このような現象が東北海域のキチジで起こっているのかを検証するため、肥満度(K)、肝重量指数(HSI)および胃内容物重量指数(SCI)を指標値として、キチジの栄養状態の時空間的(季節、海域、水深)な変化を調べた。
[成果の内容・特徴]
北緯38度50分以北と以南の水深450、550および650mにおいて、季節別に着底トロール調査を行った。各指標値を応答変数、水深、体長、海域および季節を説明変数とする3種の一般化線型モデルを作成した。全モデルにおいて、水深は負の、体長は正の影響を示し、水深が深いほど栄養状態が悪く、体長が小さいほど栄養状態が悪い可能性が示された(表1)。このことから、深い海域はキチジの生息場所としての価値が低く、小型個体は競争的に劣位であると推測された。資源の増加に伴い小型個体の分布が変化し、個体の栄養状態が悪くなったことが、成長率が低下した主要な原因であろうと推測された。
[成果の活用面・留意点]
活用面:底魚類においても栄養状態の変化が資源変動に影響することを示すもので、資源量の変動予測技術開発の方向性を決める上で活用できる可能性があり、餌生物環境等を考慮した資源評価を行う際の先例となる。留意点:成長の悪い年級群について、7歳以降の成長を追跡し、成長率が変化するかを調べる必要がある。
[その他]
研究課題名:東北海域における主要底魚類の栄養動態等を指標とした環境収容力の把握

研究期間:平成20年度(平成18〜22年度)

予算区分:交付金(一般研究)

研究担当者:服部 努・伊藤正木・成松庸二 東北区水産研究所八戸支所

発表論文等:Hattori, T., Y. Narimatsu, M. Ito, Y. Ueda, K. Fujiwara and D. Kitagawa (2007) Growth changes in bighand thornyhead Sebastolobus macrochir off the Pacific coast of northern Honshu, Japan. Fish. Sci. 73: 341-347.

Hattori, T., Y. Narimatsu, M. Ito, Y. Ueda and D. Kitagawa (2008) Annual changes in distribution depths of bighand thornyhead Sebastolobus macrochir off the Pacific coast of northern Honshu, Japan. Fish. Sci. 74: 594-602.
[具体的データ]




[2008年の研究成果情報一覧] [研究情報ページに戻る]