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送液ポンプによるマツカワ・ホシガレイの新規人工採卵技術の開発
希少資源であるマツカワとホシガレイにおいて、遺伝的多様度の高い種苗生産に資する目的で、人工卵巣腔液を卵巣内に送液して卵を排出する新たな採卵技術を開発した。用いた人工卵巣腔液中での卵の保存性を検討した結果、4時間以内では高い受精能を維持した。同採卵法により採卵、採精、授精の3つの作業の独立を可能とし、親魚の家系を考慮した計画的な種苗生産を行う技術を確立した。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所 海区水産業研究部 資源培養研究室 連絡先 Tel.0154-91-9136
推進会議名 北海道ブロック 専門 増養殖技術 研究対象 かれい 分類 普及
「研究戦略」別表該当項目 2(3)魚介藻類の資源培養技術の開発
[背景・ねらい]
マツカワとホシガレイはカレイ科マツカワ属に分類される大型の高級魚であるが、著しい資源量の減少が起こっており、資源回復を目的とした種苗生産、放流が行われている。近年、資源量の低下に伴い、マツカワ・ホシガレイの種苗生産用天然親魚の入手が困難になりつつある。加えて、人工採卵後に親魚の斃死が多いことが問題となってきた。そのため、種苗放流に際して天然資源の遺伝的多様性を損なわない種苗生産、放流技術を確立するためには種苗生産機関が保有する天然魚を含む親魚の減耗を抑制する採卵技術の開発が必要とされている。本研究では、雌親魚への採卵によるストレスを抑制することができる送液ポンプを利用した新たな人工採卵技術の開発を行った。
[成果の内容・特徴]
マツカワおよびホシガレイにおいて、雌親魚への物理的ストレスの軽減を目的とした送液ポンプによる新たな採卵技術を開発した(図1)。従来、マツカワ等の人工採卵には、搾出法が用いられ、腹部を圧搾する際の擦過症が原因で産卵期後に表皮の糜爛による斃死が起こることがある。本研究において開発した採卵法では、等張で卵巣腔液に近いイオン組成を持つ人工卵巣腔液を生殖孔からチューブを挿入してポンプ送液することで、人工卵巣腔液と共に卵を採集するため体表に与える摩擦は著しく少ない。採卵に用いた人工卵巣腔液中での卵の保存性を検討した結果、採卵作業後4時間以内に人工授精を行うことで、採卵直後とほぼ変わらない成績が得られた(図2)。採卵、採精および人工授精の作業の分離は、遺伝的多様性に配慮し、多彩な家系間での組み合わせにより種苗を生産するために有用である。先に、我々が開発した精子の短期保存法と組み合わせることで、採卵、採精作業終了後に計画的組み合わせによる人工授精を行うことを可能とした。
[成果の活用面・留意点]
開発した採卵法は、1) 親魚へのストレスを軽減できる、2) 特別な器材を必要としない、3) 精子保存と組み合わせる事で、採卵作業終了後に自在な組み合わせで人工授精が行えるという3点で大きなメリットがある。さらに、イオン組成やpHの改善など人工卵巣腔液の改良や、卵巣に挿入するチューブのサイズや先端部の形状に工夫を加える事でより効率的な採卵法あるいは産卵期終了後の卵巣内洗浄法になる。
[その他]
研究課題名:高多様性種苗生産技術を導入したマツカワ属の希少資源復元型栽培漁業の構築のための先行研究

研究期間:平成17年度

予算区分:水産総合研究センター交付金プロジェクト

研究担当者:松原孝博、安藤忠、大久保信幸、澤口小有美

発表論文等:澤口小有美・大久保信幸・安藤忠・鈴木重則・有瀧真人・山田徹生・松原孝博(2005)水産増殖
[具体的データ]

図1. マツカワのポンプ採卵の模様

澤口ら(2005)、水産増殖より


図2. 人工卵巣腔液中での時間経過に伴う受精率の変化

澤口ら(2005)、水産増殖より







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