水産研究成果情報検索結果




渓畔林の水温上昇抑制効果
 水温上昇と河畔植生との関係を明らかにするため,長野県佐久地方の千曲川本・支流において河畔植生によるカバー占有率を植生の階層別に調査し,水温上昇抑制効果との関係を調べた。その結果カバー占有率が高いと河川水温の上昇が抑制される傾向が認められた。階層の違いによる昇温抑制係数について差は認められなかった。
担当者名 長野県水産試験場 佐久支場 佐久支場  連絡先 Tel.0267-62-0162
推進会議名 内水面 専門 生態系 研究対象 他の淡水魚 分類 普及
「研究戦略」別表該当項目 3(2)生物多様性を考慮した持続的生物生産手法の開発
[背景・ねらい]
渓畔林が河川水面への日射を遮断して水温上昇を抑制することはよく知られており、水温の上昇は冷水性の河川型サケ科魚類にとって生息制限要因として大きい。そこで、カバー占有率(河川を覆う樹木の割合)に差がある複数の河川で水温を計測し、渓畔林の水温上昇抑制効果を調べた。
[成果の内容・特徴]
調査区間は、標高が800m以上で支流の流入と人為的取水がない500m程度の20ヵ所を選んだ。調査は河川水温が最も高くなる8月に行った。区間の上端と下端に水温計を設置して1時間毎に測定し、同時刻における上端と下端の最大温度差をその区間の距離で除して温度勾配(=流下距離500mあたりの上昇温度)を求めた。カバー占有率は、各区間を10等分するように河川横断線を設定し、その線上においてカバー占有長を植生の階層(草本層、低木層、高木層)ごとに計測し、全横断線の平均を求めて区間の値とした。

平成12年におけるカバー占有率が0%の7河川の調査では、最高水温が29.9℃に達した水域があり、流量と温度勾配の間で次の相関式が推定されている(図1)。

Ln(B)= -0.00133F +1.2042 (r =‐0.89)

ただし、B=温度勾配(℃/500m)、F=河川流量(L/秒)

これに基づいて各河川が仮に開空状態になった場合の温度勾配Bを推定し、実際の温度勾配Aとの比:A/Bを昇温抑制係数とした。この値が小さいほど昇温は抑制されていることになる。カバー占有率:C(%)と昇温抑制係数:A/Bの関係を図2に示した。カバー占有率と昇温抑制係数の間で有意な負の相関が認められ(n=20, p<0.05)、回帰式として

A/B= -0.1847Ln(C)+0.2658      (r =‐0.55)

が得られた。

今回の調査でカバー占有率が高い河川ほど温度勾配が小さく、水温の上昇が抑制されていることがわかった。植生の階層別の昇温抑制効果については差が認められなかった。


[成果の活用面・留意点]
渓畔林の伐採を伴う工事等において、河川工事区間下端での水温を予測でき、水温から見た渓流魚に必要な渓畔林の保全を提言できる。
[その他]
研究課題名:特定研究開発促進事業(補助事業)

研究期間:平成12年〜平成14年

研究担当者:薄井孝彦、川之辺素一;長野県水産試験場佐久支場、山本聡;同水産試験場増殖部

発表論文等:平成14年度長野県水産試験場事業報告、2004

[具体的データ]










[2004年の研究成果情報一覧] [研究情報ページに戻る]